あけほのむらさき手帖

いと白く清げなる紙ほの光り花鳥うたふ旅にいざなふ

春ははな秋はもみぢと散り果てて

子ふたり侍ける人の、ひとりは春まかりかくれ、いまひとりは秋なくなりにけるを、人のとふらひて侍けれは 

春は花秋はもみちとちりはてゝ立かくるべきこのもともなし 

(1311拾遺哀傷)読人不知

「花の散る春に一人、紅葉の散る秋にもう一人、逝ってしまい、身を寄せて暮すところもなにもないのです。」

  二人の子をそれぞれ春と秋に亡くした哀しい歌。

春やこし秋や行けんおぼつかな

山里に侍りけるに、昔あひしれる人のいつよりここには住むぞと問ひければ

春やこし秋や行けんおぼつかなかげの朽木と世を過す身は

(1176後撰雑)閑院

「春が来て秋が過ぎたこともはっきり覚えていないのです、世間から離れ枯れてゆく木のように空しく一生を終わる身の上であるわたしは。」

  春秋を流れる時間に置く。

四季の景物 忠岑

…今はの山し ちかけれは 春はかすみに たなひかれ 夏はうつせみ なきくらし 秋は時雨に そてをかし 冬は霜にそ せめらるゝ …

(1003古今短歌)壬生忠岑

「…今は、野山が近いので、春は霞がかかるように心が閉ざされ、夏は蝉のように一日泣き続け、秋は時雨に袖を濡らすように涙に濡れ、冬は霜にせめられうりょうに、つらい思いをしております。…」(高田古今 446 頁)

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